「イソトレチノインって、にきびが重症の人だけが飲む薬でしょう?」
「副作用が強くて怖いって聞いたけど…」
イソトレチノインには注意すべき副作用もあります。ですが、それは「医師の管理下」で安全に使うことが前提の薬であり、正しく使えば“最も有効なニキビ治療薬”のひとつであることは、世界中の医学ガイドラインが認めています。米国皮膚科学会(AAD)、ヨーロッパ皮膚科学会、日本国内の一部皮膚科・美容皮膚科も、難治性ニキビの治療にはイソトレチノインを第一選択肢として推奨しています。
なぜ、イソトレチノインが注目されているのか?
- 高い治療効果(90%以上の患者で改善)
- 一度の治療で“完治”することも多い
- 再発率が他の治療より低い
- 抗菌薬への耐性リスクがない
- 日本では自費診療だが、欧米では標準治療に含まれる
最新の医学的研究や国際的なガイドラインに基づき、イソトレチノインの評価はますます高まっています。本記事では、ニキビ治療におけるイソトレチノインについて詳しく紹介していきます。また、にきびについての理解が深まりますので、にきび治療の基本ガイドも併せて読んでみてください。
ニキビに悩むあなたへ 〜「もう治らない」と思っていませんか?〜
治療しても、またニキビができる…」と悩んでいる方へ
- 鏡を見るたびに、同じ場所にできる赤い腫れ。
- 皮膚科にも通ったし、話題のスキンケアも試した。
- だけど、なぜかニキビが繰り返しできてしまう。
そんな悩みを抱えている方は、決して少なくありません。
実際、日本人の約8割が一度はニキビに悩まされています。
「思春期だから仕方ない」
「ストレスや食生活のせいかも」
「いつか治るだろう」
そんな風に“様子を見て”いるうちに、ニキビ跡になったり、心の傷を残したりすることもあるのです。
「ニキビ=自然に治るもの」は、もう過去の常識
かつて、ニキビは“若さの象徴”であり、「そのうち治るもの」と見なされてきました。しかし現代の皮膚科学では、ニキビは慢性炎症性疾患と定義されており、放置することで長期にわたって悪化・再発することが明らかになっています。
🔎 チェックリスト:あなたは“医学的介入”の対象かも?
□ 市販薬・スキンケアを6ヶ月以上続けても改善しない
□ 額や顎だけでなく、頬や背中にもニキビがある
□ 赤く腫れた「炎症性ニキビ」が目立つ
□ ニキビ跡が色素沈着やクレーターになって残っている
□ 自信が持てない、外出が嫌になる、心が塞ぐ
一つでも当てはまれば、クリニックで医師に相談しましょう。
イソトレチノインとは何か?
ビタミンAから作られた特別なお薬
イソトレチノインは、ビタミンA(レチノール)をもとに作られた「ビタミンA誘導体」と呼ばれるお薬です。ビタミンAは皮膚の健康を保つ上で欠かせない栄養素で、皮膚のターンオーバー(生まれ変わり)を整えたり、皮脂の分泌をコントロールしたりする働きがあります。イソトレチノインはこのビタミンAのパワーをさらに高めたもので、にきびの根本原因に直接アプローチすることができる、特別な内服薬です。
にきびの4大原因に同時に働きかける
にきびの主な原因は以下の4つといわれています。
1. 皮脂の過剰な分泌
2. 毛穴のつまり(角化異常)
3. アクネ菌の繁殖
4. 炎症反応
イソトレチノインは、これらすべての原因に同時に働きかけることができる、数少ないお薬です。特に皮脂の分泌を大きく減らす作用があり、「皮脂腺を小さくする」といわれるほど強力です。そのため、重度のにきびや、何をやっても繰り返してしまうにきびに対して効果が期待できます。
イソトレチノインの効果は本当に高いのか?
2025年にアメリカのJAMA Dermatology誌に掲載された大規模コホート研究(Lai & Barbieriら, 2025年)でイソトレチノインの有効性が示唆されています。この研究は、約19,900名の患者を対象とした世界最大級のデータです。
目的:イソトレチノインの累積用量と再発率の関連性を調査
結果:120〜150mg/kgの累積用量で再発率は約20%以下に低減
用量が少ない患者では再発率が約40%以上に増加
用量と効果には明確な用量反応関係がある
この報告では、効果的な治療には一定の累積投与量が不可欠であることを示唆しています。
累積用量が効果の鍵
イソトレチノインの効果は「単に飲み続ければ良い」薬ではありません。副作用のリスクも考慮して、累積用量を目安とした期間限定で服用することが大事です。
- 標準的な累積用量は120〜150mg/kg
- 体重60kgの成人なら、7,200mg〜9,000mgの総投与量が目標
- 用量不足では効果が弱まり、再発リスクが高まる
- 用量過多の副作用リスクもあるため医師の管理が必須
副作用は何がある?
イソトレチノインは強力な薬であるため、副作用も報告されています。代表的なものは以下の症状になります。
- 皮膚の乾燥(唇や目、鼻腔の乾燥も含む)
- 皮膚の赤み・皮むけ
- 血液検査異常(肝機能、血脂値の上昇)
- 眼の異常(ドライアイ、視力変化)
- 筋肉痛・関節痛
- 妊娠中の胎児奇形リスク(妊娠中の服用は絶対禁止)
懸念される「うつ・精神症状」について
イソトレチノインの服用開始後に「うつ症状」や「自殺念慮」の報告があったことから、うつ・精神症状のあるニキビ患者さんへのイソトレチノインの処方は慎重となっていました。しかしながら近年の研究によって、イソトレチノインによる「うつ・精神症状」のリスクは否定できないが、因果関係は明確でない状態となっています。
治療の進め方
イソトレチノインは、医師の管理のもと、段階的に治療を進めていきます。典型的な治療プロセスは以下の通りです。
Step 1:初回診察と評価
- ニキビの種類や重症度を詳しく診断
- 既往歴、特に精神症状や肝疾患、妊娠の有無を確認
- 血液検査(肝機能、脂質、血算)を実施
- 療方針と副作用について丁寧に説明
- 妊娠リスクがある女性は避妊指導を行う
Step 2:投薬開始
- 通常は低用量からスタートし、徐々に体重あたりの用量を調整(累積量120~150mg/kgが目標)
- 初期悪化(好転反応:ニキビが一時的に悪くなること)が起こる場合もあるが、継続が重要
- 副作用予防のための保湿指導を行う
Step 3:定期的なフォローアップ
- 4週間に1回程度の通院が一般的
- 血液検査を数ヶ月ごとに実施し、肝機能や脂質の変化をチェック
- 副作用の有無や精神状態の確認
- 必要に応じて用量の調整や休薬を検討
Step 4:治療終了とその後の経過観察
- 累積投与量に達したら終了判定
- 服用終了後も半年〜1年程度は再発の有無を観察
- 必要に応じて追加治療やスキンケア指導を実施
イソトレチノイン治療を受けられない方
- 未成年の方:成長に影響が出るため服用できません。
- 妊娠・授乳中の方:流産・胎児奇形のリスクがあり服用できません。
- 肝機能異常の方:肝臓への負担が大きく鳴るため服用できません。
- 特定の薬剤を服用中の方:副作用発生リスクが高まるため服用できないことがあります。
- イソトレチノインにアレルギーのある方:
- その他:医師の診察にて服用できない場合があります。
名駅なぎクリニックではイソトレチノイン(アクネトレント)以外にもニキビ治療に必要な各種内服外用を用意しています。
日常生活での注意点
イソトレチノインを服用している間は、以下のポイントに注意しましょう。
1)保湿を徹底する
皮膚や粘膜の乾燥がほぼ100%に近く起こるため、リップクリームや保湿剤をこまめに使いましょう。また目の乾燥には点眼薬も有効です。
2)紫外線対策をする
皮膚が敏感になるため、日焼け止めの使用は必須です。長時間の直射日光を避けましょう。
3)飲酒や激しい運動に注意
肝機能負担を避けるため、過度な飲酒は控えましょう。筋肉痛や関節痛が出やすいので激しい運動は注意しましょう。
4)妊娠・避妊の徹底
妊娠の可能性がある女性は、服用前1ヶ月・服用中・服用終了後1ヶ月間は、厳格な避妊が必要です。ピルの服用も検討しましょう。なお男性も服用中・服用終了後1ヶ月間の避妊が必要です。
5)自己判断での服用は厳禁
効果が無いから1度に2回分服用するなど、自己判断で服薬する事は危険です。必ず医師の指示通りに服用しましょう。
イソトレチノイン治療後の肌ケアと再発防止策
イソトレチノインによる治療は、ニキビの原因である皮脂腺の過剰な働きを抑え、肌の状態を根本的に改善します。しかし治療終了後も、肌は新しい環境に順応する過程にあり、ケアを怠るとトラブルが再発したり、乾燥や赤みが長引いたりすることがあります。そのため、治療終了後の正しいスキンケアと生活習慣の継続が、美しい肌を長く保つ鍵となります。毎日のビタミンC外用の有効性についてまとめていますので、こちらもご覧ください。
クリニックでのアフターケアとメンテナンスも受けつつ、これまでのニキビでできたにきび痕への対策を初めていきましょう。
よくある質問
Q1.イソトレチノインはどのくらいで効果が実感できますか?
個人差はありますが、多くの方は服用開始から4〜8週間でニキビの減少や炎症の改善を感じ始めます。ただし、初期には一時的に悪化する場合もあるため、根気よく治療を続けることが重要です。
Q2.イソトレチノインはニキビを完治させますか?
イソトレチノインは90%以上の方に効果が示されています。ニキビの重症度は大幅に改善し、長期的な寛解が期待できます。ただし再発するケースもあり、その際は医師と相談しながら追加治療を検討します。
Q3.ニキビが一時的に悪化したけど大丈夫?
初期悪化(好転反応)は比較的よくある現象です。多くの場合は1〜2ヶ月で改善するので焦らず続けましょう。
Q4.副作用で顔の皮がむけるのはどう対処したら?
保湿剤をたっぷり使い、刺激の少ない洗顔料を選んでください。通常4〜8週間で落ち着いてきます。皮むけがひどい場合は医師に相談をしてください。
Q5.飲み忘れた場合はどうすれば良いですか?
服用を忘れた場合は気づいた時点で速やかに飲みましょう。ただし次の服用時間が近い場合は無理に2回分を飲まず、次回分を守ってください。
Q6.服用期間が長くなってしまった。副作用は大丈夫?
定期的に血液検査や診察を受けていれば安全に管理できます。自己判断は避けてください。
Q7.うつ症状が気になる。どうすればいい?
気分の変化や不安があればすぐに医師に相談を。場合によっては精神科受診をおすすめします。
Q8.妊娠を希望していますが、いつから安全ですか?
服用中は絶対に妊娠を避けてください。服用終了後も1ヶ月は避妊を継続する必要があります。この期間を過ぎれば妊娠可能ですが、必ず医師の指示に従ってください。
Q9.治療中に他の薬を飲んでも大丈夫ですか?
他の薬を併用する場合は必ず医師に伝えてください。特にビタミンAサプリメントや特定の抗生物質(テトラサイクリン系など)は併用禁忌です。
名駅なぎクリニックではイソトレチノイン以外にもニキビ治療に必要な各種内服外用を用意しています。またケミカルピーリングはじめ、プラズマ治療、GOLD PTT治療、レーザー治療など、新しくできるニキビやニキビ痕治療も準備しています。皆様のお肌状態に合わせて最適な治療を提案いたしますので、繰り返すニキビ、ニキビ痕でお悩みの方はご相談ください。