女性の薄毛の原因とは?【医師が解説】受診を考える目安と正しい対策

女性の薄毛の原因について医師が頭皮を診察しながら解説している様子

「最近、分け目が目立つようになった」「髪全体のボリュームが減った気がする」──このような変化に気づき、不安を感じている方は少なくありません。鏡を見るたびに気になりつつも、「年齢のせいかもしれない」「一時的なものだろう」と様子を見ているうちに、どう対処すればよいのか分からなくなってしまうこともあるでしょう。

女性の薄毛は、男性のように生え際が後退するケースばかりではなく、分け目が広がったり、全体的に髪が細くなったりと、気づきにくい形で進行することが多いのが特徴です。そのため、薄毛が始まっていても自覚しにくく、対策が遅れてしまうことがあります。

女性の薄毛にはホルモンバランスの変化、出産や加齢、栄養状態、ストレス、体の不調など、さまざまな原因が関係しています。原因によって適切な対処法は大きく異なり、生活習慣の見直しで改善が期待できる場合もあれば、医療的な視点での判断が重要になるケースもあります。

この記事では、皮膚科の専門的な立場から、女性の薄毛の主な原因を分かりやすく解説し、どのような場合に医療機関への相談を検討すべきかについてもお伝えします。薄毛の悩みを一人で抱え込まず、正しい情報を知るための第一歩として、ぜひ参考にしてください。

目次

女性の薄毛はなぜ起こるのか|まず知っておきたい基礎知識

女性の薄毛の原因となるヘアサイクル(成長期・退行期・休止期)の仕組みを示した図解

女性の薄毛について正しく理解するためには、まず「髪がどのように生え、どのように抜けていくのか」という基本的な仕組みを知ることが重要です。薄毛はある日突然起こるものではなく、髪の成長サイクルが少しずつ乱れることで、時間をかけて目に見える変化として現れてきます。

この基礎知識を知っておくことで、「なぜ薄毛が起こるのか」「どのような変化に注意すべきか」を理解しやすくなります。

女性の髪の毛周期(ヘアサイクル)

髪の毛は、一定の周期で生え変わっています。この仕組みを「ヘアサイクル(毛周期)」と呼び、主に「成長期」「退行期」「休止期」の3つの段階に分かれています(参照:グルノーブル美容専門学校「毛周期について」)。

段階期間の目安(女性の髪の場合)特徴
成長期3〜6年程度髪が太く長く成長する期間。健康な状態では数年単位で続く。
退行期数週間程度髪の成長が止まり、毛根が徐々に小さくなる移行期間。
休止期数か月程度髪が自然に抜け落ち、次の新しい毛が生える準備が始まる期間。

女性の薄毛では、このヘアサイクルのうち「成長期」が短くなったり、逆に「休止期」が長くなってしまうケースが多く見られます。その結果、十分に成長しきらない細い毛が増え、全体のボリュームが低下していきます。

このようなヘアサイクルの乱れが原因で起きるのが、FPHL(Female Pattern Hair Loss:女性型脱毛症)です。

FPHLは、以前は日本で「FAGA(Female Androgenetic Alopecia)」と呼ばれることもありましたが、現在は日本皮膚科学会の診療ガイドラインにおいてFPHLという名称が正式に採用されています(参照:日本皮膚科学会ガイドライン)。

FPHLの特徴として、分け目が徐々に広がる、頭頂部を中心に全体的に薄くなる、髪が細くコシがなくなるといった点が挙げられます。男性の薄毛のように急激な後退が起こることは少ないものの、少しずつ進行するケースが多く、気づいたときには変化がはっきりしていることもあります。

男性の薄毛(AGA)との違い

女性の薄毛は、男性に多い薄毛のタイプとは現れ方が異なります。男性の場合、生え際や頭頂部がはっきりと後退するのに対し、女性では分け目を中心に、頭全体の毛量が少しずつ減ることが特徴です。進行が比較的ゆるやかなため、「気のせい」「ヘアスタイルの問題」と思い込みやすく、薄毛が進行していることに気づきにくい傾向があります。

また、男性の薄毛(AGA)では男性ホルモンが原因となっていますが、女性の薄毛(FPHL)では、これから説明するように様々な原因があります。

こうした違いから、女性の薄毛は自己判断が難しく、原因を正確に見極めるためには専門的な視点が重要になります。

原因1|ホルモンバランスの変化

女性の薄毛の原因となるホルモンバランスの変化を示すイメージ

女性の薄毛の原因として、特に重要なのがホルモンバランスの変化です。女性ホルモンは髪の成長や太さに深く関わっており、その分泌量やバランスが崩れることで、髪にさまざまな変化が現れます。

ホルモンの影響による薄毛は、年齢や体質に関係なく起こる可能性があるため、「まだ若いから大丈夫」と思っている場合でも注意が必要です。また、出産や更年期といったライフイベントも、ホルモンバランスを大きく変化させる要因となります。

女性ホルモンと髪の関係

女性の体内では、エストロゲンと呼ばれる女性ホルモンが、髪の成長期を維持し、ハリやコシのある状態を保つ働きをしています。エストロゲンが十分に分泌されている間は、髪は太く長く成長しやすくなります。

しかし、加齢や体調の変化、生活環境の影響などによりエストロゲンが減少すると、成長期が短くなり、細く短い毛が増えていきます。その結果、抜け毛が増えたり、髪全体のボリュームが低下したりといった変化につながります。

更年期・加齢による影響

40代以降になると、更年期に伴うホルモンバランスの変化が起こりやすくなります。この時期に薄毛を自覚する方は多く、「年齢のせいだから仕方がない」と感じてしまうことも少なくありません。

しかし、すべての薄毛が自然な加齢変化とは限りません。ホルモンの影響による脱毛症の場合、医療的な視点で状態を確認し、適切な対策を取ることで、進行を抑えたり、改善が期待できるケースもあります。

出産・ライフイベントによる一時的な薄毛

女性の薄毛は、病気や体質だけでなく、出産や大きな生活環境の変化といったライフイベントをきっかけに起こることもあります。これらの出来事は体に大きな負担を与え、一時的にホルモンバランスが大きく変化するため、髪の状態にも影響を及ぼしやすくなります。

特に妊娠中は、女性ホルモンの分泌が増えることで髪の成長期が長くなり、抜け毛が少なくなる傾向があります。しかし、出産を迎えるとホルモンバランスが急激に変化し、それまで成長期にとどまっていた髪が一斉に休止期へ移行します。

その結果、出産後数か月してから抜け毛が急に増え、「急に薄くなった」と感じることがあります。これは出産後脱毛症と呼ばれ、多くの場合は出産後2〜4か月頃から始まり、半年〜1年程度で自然に落ち着く一時的な変化とされています(参照:J-STAGE「産後脱毛の実態把握と精神症状へ及ぼす影響」)。

長引く場合に考えられる原因

出産後の抜け毛は、通常であれば時間の経過とともに徐々に落ち着いていきます。しかし、半年以上経っても薄毛が改善しない場合や、分け目の広がりが目立つようになってきた場合には注意が必要です。

ホルモンバランスの乱れが長引いているケースや、栄養不足、強いストレスなど、他の原因が重なっていることも考えられます。一時的なものと思い込まず、変化が続く場合には、専門的な視点で状態を確認することが安心につながります。

原因2|栄養不足・体調不良による影響

女性の薄毛の原因となる栄養不足に関係するタンパク質や鉄分、ビタミンを含む食品のイメージ

髪の毛は、体の中で作られる組織の一つです。そのため、体調や栄養状態の影響を受けやすく、必要な栄養が不足すると、真っ先に髪の変化として現れることがあります。

「しっかり食事をしているつもりでも、実は髪に必要な栄養が足りていない」というケースも少なくありません。

髪の成長に必要な栄養素

髪の主成分はタンパク質であり、健康な髪を育てるためには、十分なタンパク質の摂取が欠かせません。加えて、鉄分亜鉛ビタミン類も、髪の成長を支える重要な役割を担っています。

特に女性では、月経や出産などの影響により鉄分が不足しやすく、知らないうちに貧血傾向になっていることもあります。鉄分が不足すると、頭皮や毛根への酸素供給が滞り、髪が細くなったり、抜け毛が増えたりする原因になります。

なお、栄養素と発毛の関係についてはすべてが直接的な因果関係として証明されているわけではありませんが、臨床現場では鉄分や亜鉛の欠乏が脱毛と関連するケースが広く知られています(参照:慶應義塾大学病院「脱毛症について」)。

無理なダイエット・食生活の乱れ

短期間で体重を落とすような無理なダイエットや、偏った食生活は、髪に必要な栄養素の不足を招きやすくなります。体は生命維持を優先するため、栄養が不足すると、髪や爪といった部分への供給が後回しにされてしまいます。

その結果、「体調はそれほど悪くないのに、髪だけが急に細くなった」「抜け毛が増えた」といった変化が起こることがあります。こうした場合、見た目の変化だけで判断せず、体全体の状態を見直すことが大切です。

原因3|ストレス・生活習慣・ヘアケア

ストレスや生活習慣、ヘアケアの乱れが女性の薄毛の原因に影響することを示すイメージ

日々のストレスや生活習慣の乱れ、誤ったヘアケアも、女性の薄毛に大きく関係します。これらは自覚しにくいものの、積み重なることで髪や頭皮に負担をかけ、薄毛を進行させる要因となります。

「特別な病気がないのに薄毛が気になる」という場合、このような日常的な要因が影響していることも少なくありません。

ストレスと自律神経の関係

強いストレスや慢性的な疲労は、自律神経のバランスを乱し、血流を低下させる原因になります。頭皮の血流が悪くなると、毛根に十分な栄養や酸素が届きにくくなり、髪の成長が妨げられてしまいます。

また、ストレスはホルモンバランスにも影響を与えるため、抜け毛の増加や髪の細りといった変化につながることがあります。

不適切なヘアケアによる影響

毎日のヘアケアも、方法によっては薄毛の原因になることがあります。洗浄力の強すぎるシャンプーの使用や、爪を立てて洗う習慣、強く引っ張るようなブラッシングは、頭皮や毛根に負担をかけます。

また、髪を強く結ぶスタイルを長期間続けていると、牽引性脱毛症と呼ばれる状態を引き起こすことがあります。ヘアケアは「清潔に保つこと」と同時に、「頭皮に負担をかけすぎないこと」を意識するようにしましょう。

原因4|病気・薬剤が関係する薄毛

病気や薬剤の影響によって女性の薄毛が起こる可能性を示した医療イメージ

女性の薄毛の中には、体の不調や治療の影響が関係しているケースもあります。この場合、生活習慣の見直しだけでは改善が難しく、原因となっている病気や薬剤を把握することが重要になります。

見た目の変化だけで判断せず、体のサインとして薄毛を捉える視点が大切です。

内科的な病気・皮膚の病気による影響

薄毛の原因となる病気の一つに、甲状腺の機能異常があります。甲状腺ホルモンは新陳代謝に関わっており、その分泌が過剰でも不足しても、抜け毛が増えることがあります。

また、自己免疫の異常皮膚の病気が関係している場合もあり、頭皮の状態によっては専門的な診察が必要になることがあります。こうしたケースでは、薄毛以外にも体調の変化が見られることがあるため、注意深く観察するようにしましょう。

薬剤の影響による薄毛

服用している薬の影響で、抜け毛が増えることもあります。ホルモンに作用する薬や、一部の治療薬では、毛周期に影響を与えることが知られています。

気になる変化があっても、自己判断で薬の使用を中止するのは避けるべきです。薄毛と薬剤の関係が疑われる場合は、勝手に服用をやめず、必ず専門医に相談したうえで適切な対応を検討しましょう。

女性の薄毛は自分で判断できる?受診を考える目安

女性の薄毛について皮膚科受診を検討する目安となるチェックポイントを示した一覧イメージ

女性の薄毛は進行がゆるやかなことが多く、「もう少し様子を見ても大丈夫」と判断してしまいがちです。しかし、自己判断だけでは原因を見誤ってしまうこともあります。

ここでは、医療機関への相談を検討したほうがよい目安について解説します。

相談を検討したほうがよいサイン

次のような変化が見られる場合は、一度専門的な視点で確認することをおすすめします。

  • 抜け毛の量が明らかに増え、数か月以上続いている
  • 分け目や頭頂部の地肌が目立つようになってきた
  • 髪全体が細くなり、ボリュームが戻らない
  • 生活習慣を見直しても改善を感じられない

これらは、ホルモンバランスの変化や脱毛症が関係している可能性があります。

セルフケアで様子を見る場合の注意点

軽度の変化であれば、生活習慣の見直しやヘアケアの改善によって、状態が落ち着くこともあります。ただし、一定期間セルフケアを続けても変化が見られない場合には、無理に続けることで対処が遅れてしまうことがあります。

薄毛は早い段階で原因を把握することで、選択できる対策の幅が広がります。「相談するほどではないかも」と感じる段階でも、専門的な視点で確認することは、将来的な安心につながります。

女性の薄毛は皮膚科で相談できます

女性が皮膚科の受付で薄毛の相談を行っている様子を表した医療相談イメージ

薄毛の悩みは「美容の問題」と捉えられがちですが、医学的には皮膚や毛根の状態に関わる症状の一つです。そのため、女性の薄毛についても、皮膚科で相談することが可能です。

「どこに相談すればよいのか分からない」と感じている方にとって、皮膚科は身近で相談しやすい選択肢といえます。

皮膚科で行う診察・確認の考え方

皮膚科では、問診を通して生活習慣や体調の変化を確認し、頭皮や毛髪の状態を専門的な視点で評価します。必要に応じて、薄毛の種類や原因を整理し、今後の対応について説明を受けることができます。

薄毛の原因は一つとは限らず、複数の要因が重なっていることも少なくありません。そのため、自己判断では気づきにくい背景を把握できる点が、専門的な相談の大きなメリットです。

早めに相談することのメリット

薄毛は、進行してから対処するよりも、気になり始めた段階で相談するほうが、選択できる対策の幅が広がります。また、「問題がないことを確認できる」という点でも、専門的な診察は安心につながります。

不安を抱えたまま様子を見続けるのではなく、気になる変化があれば一度相談してみることが、将来的な後悔を防ぐことにもつながります。

当院「名駅なぎクリニック」では、2026年春より薄毛治療を開始予定です。一人ひとりの状態や背景を丁寧に確認しながら、無理のない形で向き合える選択肢をご提案していきます。髪の変化に不安を感じた際は、どうぞお気軽にご相談ください。

女性の薄毛に関するFAQ

女性の薄毛に関するよくある質問を医師が分かりやすく説明しているイメージ
女性の薄毛は年齢のせいと考えてよいのでしょうか?

年齢による変化が影響することはありますが、すべての薄毛が加齢だけで起こるわけではありません。ホルモンバランスの変化や体調、生活習慣など、複数の要因が関係していることも多く、原因によって適切な対応は異なります。

抜け毛が増えていますが、一時的なものか判断できますか?

出産後や強いストレスがかかった後など、一時的に抜け毛が増えるケースもあります。ただし、数か月以上変化が続く場合や、分け目が目立つようになってきた場合は、他の原因が関係している可能性も考えられます。

セルフケアだけで様子を見ても問題ありませんか?

軽度の変化であれば、生活習慣の見直しやヘアケアの改善によって落ち着くこともあります。ただし、一定期間続けても改善を感じられない場合には、無理に様子を見続けず、専門的な視点で状態を確認することが安心につながります。

薄毛治療はどのタイミングで考えるべきですか?

薄毛治療は、進行してから始めるよりも、気になり始めた段階で検討することで選択肢が広がることがあります。原因や状態によって対応は異なるため、まずは現状を把握することが大切です。

まとめ|女性の薄毛は原因を知ることが第一歩です

女性の薄毛は原因が複数あるため、要因を整理して向き合うことの大切さを表したイメージ

女性の薄毛は、決して珍しいものではなく、年齢や体質だけでなく、ホルモンバランスの変化、出産や生活環境の変化、栄養状態、ストレス、体の不調など、さまざまな要因が関係しています。そのため、「これが原因」と一つに決めつけてしまうのは難しく、正しい対処をするためには原因を整理することが重要です。

薄毛の変化はゆっくり進行することが多く、「気のせいかもしれない」と感じながら見過ごしてしまいがちです。しかし、分け目が目立つ、髪が細くなった、抜け毛が増えたといった変化は、体からのサインである可能性もあります。

生活習慣の見直しやヘアケアの改善で落ち着く場合もありますが、変化が続く場合や不安が強い場合には、専門的な視点で状態を確認することが安心につながります。皮膚科では、薄毛の背景にある要因を医学的に整理し、今後どのように向き合っていくかを考えることができます。

薄毛の悩みを一人で抱え込まず、正しい情報をもとに判断することが大切です。気になる変化があれば、早めに相談することで、今後の選択肢を広げることにもつながります。

専門医からのコメント

「薄毛かもしれない」と感じたとき、不安を抱えながらも、誰にも相談できずに悩んでしまう方は少なくありません。女性の薄毛は、見た目の変化がゆるやかな分、気づきにくく、判断が難しいことも特徴の一つです。
大切なのは、原因を一つに決めつけず、今の状態を正しく知ることです。専門的な視点で整理することで、「経過を見ても問題ないのか」「何らかの対応を考えたほうがよいのか」が見えてきます。

皮膚科研究医として20年以上の経験を持つ研究医。遺伝性光線過敏症と早老症を専門とし、フランス国立研究所での研究を経て、名古屋大学特任准教授を歴任。2025年に名駅なぎクリニックを開業。日本皮膚科学会、日本再生医療学会、日本人類遺伝学会所属。科学的根拠に基づく個別治療とエイジングケアを提供している。

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